棋士と睡眠

 睡眠は大事だ。人間は一生の内3分の1、約24万時間もの時間を睡眠に費やすそうだ。棋士にとって睡眠の質の低下はパフォーマンスの低下に直結するのだから、安眠の確保は重要なテーマである。

 筆者も奨励会時代から大いに悩まされてきた。奨励会前日は緊張感から寝付けない。体を適度に疲れさせるためにランニングを行い、入浴や夕食時間に気を遣ってきた。そして寝る直前にはホットアイマスクやヒーリング音楽で副交感神経を高める。ここまでしている奨励会員は少ないかもしれないが、大切なことなのでやりすぎということは無い。

 対局が終わった日も大変だ。対局終了後はアドレナリンが大量分泌されていて睡眠から一番遠い脳内になっているのだ。無意識の内にその日の対局を振り返ってしまい、脳内で盤駒が動き出すともう眠れない…!疲れているのに眠れないのはなかなか辛いものがある。

 昔、先輩棋士に聞いたことがある。「棋士はよく対局が終わった後、呑みに行かれていますが疲れていないのですか?」「どの道、眠れないから吞んでるんだよ(笑)」

 棋士にはなったが、対局前後の睡眠については今後もいい方法を模索していかないといけない。安眠方法について他の棋士にも話を聞いてみたいものだ。

井田明宏

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