実戦と詰将棋と終盤力

将棋指しは大きく「序盤型」と「終盤型」の二種類に分類できる。
そして、「終盤型」はさらに「詰将棋派」「実戦派」に分類できると言うのが持論である。
「終盤型」は例外なく詰将棋が得意だと思われがちだが、これはよくある勘違い。
詰将棋を解くのが速い人が終盤が強いとは限らないし、逆もまた然りである。
ちなみに筆者は「実戦派」の「終盤型」で、詰将棋はあまり解かない。
もちろん仕事として最低限は解くよう心がけているし、解図速度も普通の人よりは速い。
ただ、プロの中で比べればよくて中の下ぐらいだと思う。

かくいう筆者も、かつては解図能力に自信を持っていた時期があった。
地元の将棋道場でよく詰将棋を解いていて、周囲と比べても圧倒的に速かったのが理由である。
『黒田くんは詰将棋が速い』などと持ち上げられ、自分でもそう信じて疑わなかったものだ。
ただ、奨励会員が詰将棋が速く解けるのは、一般人と比べると当たり前の話。
指将棋はやっているうちに自然と己の立ち位置が分かるものだが、
詰将棋の速度を競うのはせいぜい身内ぐらい。
当時はその違いに気付かず、この「井の中の蛙現象」が起きてしまったのである。
そして、周囲に勧められるがまま、詰将棋解答選手権に出場したのが奨励会2級の時だった。
意気揚々と臨んだが結果は27位と、同世代のライバル達と比べてもあまりに凡庸な成績。
蛙は身の程を知った。

当時の筆者は逆転勝ちが多く、終盤型の棋風だったのだが、
この解答選手権の結果を受けて筆者の中に新たな疑問が生じた。
「なぜ、自分より詰将棋が速い相手に逆転勝ちできるのか」である。
この疑問が「詰将棋力≠終盤力」という考えに繋がっていった。
詰将棋を否定している訳ではない。が、終盤力はそれだけでは決まらないということだ。

では筆者が詰将棋よりも時間をかけてきた勉強法は何かと言うと、実戦である。
筆者がプロを志してからプロとして戦っている現在まで、欠かさず継続しているのがネット将棋。
「将棋俱楽部24」での対局だ。
数多の実戦を通して勝負勘を磨いたことが、己の終盤力の土台となっていると感じる。
終盤力とは、実戦経験と詰将棋の総合力。
また、どちらにより比重を置いているかが「詰将棋派」「実戦派」の境目ではないだろうか。

黒田尭之

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