もぐら兄弟

ひょんなことからM-1を目指すことになった。

 きっかけは2年前の西遊棋のイベントである。対局に負けた方が服部くんと罰ゲームで漫才をするといったもの。関西人として人生で一回くらいは漫才をするのもアリだなと思い罰ゲームと言いつつ楽しみな気持ちもあった。ネタはプロのお笑いの人が書いてくれていたため覚えるだけで良かったのも有り難かった。滑ったらネタ合わせは当日の僅かな時間のみと言い訳をするつもりだったがファンの皆さんは温かく想像の何倍も笑ってくれた。終ったあとの大きな拍手は今も心に残っている。気持ちいいー。

 将棋を指していて勝ってホッとしたり心の中で喜んだりすることはある。だが終局直後に大歓声を目の前で浴びることは無いに等しい。伝統文化という良さもありながらスポーツとは違う寂しさは少し感じてしまう。敗者がいるため仕方のないこととは分かっている。ことお笑いに関しては誰かを傷つけたりすることはない。ただ面白いことをすれば笑ってくれる。子どもの頃から見てきたがなんて素晴らしいものなんだと再認識させられた。冗談半分でM-1を目指しますと言っていたが結婚式でしたりクラファン用に漫才を作っているうちに記念に出てみる、と現実味を帯びてきた。漫才を作る時間は大変ではあるが楽しく気分転換の趣味になっている。ただ棋士がお笑いましてやM-1に出ることに賛否はあるだろう。

 そう、だからこそ今まで以上に結果にこだわってやっていきたい。もちろん将棋で。

冨田誠也

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